原始・英語共通化・地球語共有の三社会を比較する


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言語と社会の密着する様子を、手荒ながら以下の3世界に分けてまとめてみました。
比較して、地球語の必要性についてぜひ関心をおよせください。


原始
英語が共通語の世界
地球語が仲介する世界








表現は、いのちのほとばしりだった。体中の感覚・運動の器官が自然に働く結果として、 さまざまな方法で表現した。

動作:ものや仲間を直接指す、動きや形の真似、速さ・方向・順序などの表現用。

描く・作る:絵図・模型・矢印・配置などでイメージを伝える⇒異なる時と場所にも伝わった。

音声:痛み・喜び・怒り・恐れ・脅しなど感情の表現、群れの統率のための合図や掛け声、注意の呼びかけ、鳴き声や音の真似で声や音の主を表現、などに。
     
人体のしくみが共通のため、これらの初期の表現は、仲間以外にも伝わりやすかっただろう。

最初は感情から発していたいろんな声を、それぞれの感情につながる イメージを呼び出すことば として伝達に使うようになる。
音声には、単なる表意手段でなく、魂の奥に響かせる秘儀的な要素もあったと想像する。


音声言語が土台
特定の音素を基に構成したことば(音声記号)で意味を伝える。民族により利用する音の要素が異なるので、他民族が英語の発音に耳慣れるのは容易ではない。

変化する運命
音声は、発すると消えるので変りやすく、音声言語は活き活きと伝えるが、変化しつづける特徴をもつ。方言の発生を防げず、未来に伝達を届けるのも困難。

アルファベット表記:わずか26×2文字で表記が可能なため、文字の記憶量が少なくてすみ、タイプ・機械印刷・コンピュータ文明をいち早く発展させ、伝達のグローバル化を先導した。

英語文化に基づく
この文化に慣れない者には理解がむつかしい。また、異文化の内容を英語で伝えるのにしばしば表現が曲がってしまうが、英語しか知らない人は意味の曲がりに気づけない。通訳や翻訳機にたよると、このせいで摩擦や誤解をひろく起こす可能性がある。

柔軟だけどむつかしい
他の欧州語と比較して、文法を合理化し、語彙を多言語から柔軟に吸収してふやしてきた。そこで、取り付きやすい反面、品詞の規則性が一定でなく、同義語が多く、英語民にさえ情報の整理や検索が容易とはいえない。

明確さ
普通文では、主語・動詞・目的語の順に語順が決まっていて、ふつう主語述語をはっきりさせ、文章が論理的で、受け取り方の間違いは少ないが、あいまいな表現には不向き。

込み入った文学
しくみからの作用・反作用として、追求が深く、込み入った装飾性の高い文学やなぞなぞ・ことばあそびなども発展させた。

共通でない多手段
英語の手話や点字など他の伝達手段を必要とする者は、別に憶えねばならない。その上それらの利用範囲も限られる。

この世界では、少数言語が消されたり、英語以外の言語が変形する。また伝達のマイノリティーを産みつづけ、社会間の差や摩擦を保つ。
文化の近いアジア人同士などが交流する場合に英語を使い英語文化を迂回するのには、違和感が付きまとうことも多い。
視覚言語が土台
書かれる記号は、音声と違って変化しにくい。また目に訴えるシンボルは、共通にわかりやすく、組み合わせや多様な表現手段への展開も自由になる可能性がある。そこで、ひろく永く有効な共通の補助言語に向く性質をもつ。地球語は この性質を利用し、母語では通じない伝達を、多手段で助ける。

表意文字
地球語は、扱いやすい数の基礎表意記号を合理的に組み合わすしくみにより、少ない学習量で限りない表現力をもつ。各自の母語 で読みながらそれらを操作する。専用ソフトで文字入力も容易。文献のなかから目当ての記号も捜しやすい。

文化ではなく自然に基づく
基礎記号は、特定文化ではなく、ヒト共通の認識要素{上下・大小・時・色など}と地球自然に基づく。基礎は変化しないが、組み合わせを変えながら時代の表現を追う。宗教や文化関連の用語も、基礎要素を組んで客観的に表す。

地球社会下で発達
多元的な内容をうまく情報整理できるよう、最初から地球民の中にひらいて批判・修正を重ねながら発展させる。

語順は自由に
主語・動詞・目的語などの順序や修飾語が働く方向は、単純な記号で識別するので自由。それぞれの母語に沿って表現すると、順序から互いに背景の違いを感じながら通じる。

相手に親切な方法
正確さを要する場合や不特定多数が相手のときには、間違いの起こりにくい合理的な文章で。そうでなければ、視覚性を活かした単純な表現やあいまい表現も可能。交流の双方で理解しさえできれば、表現が単純なほど親切。

マルチ表現手段に応用展開
手話・身振り・眼球の動き・点字に代わる盛り上げプリントなど多くの伝達手段に、記号の形とのつながりから無理なく応用する。記号の名を発音する方法で音声伝達も可能。

多手段の基礎記号は、原始的な表現{象形・矢印的な記号、指差しなど}に近い自然さを手がかりにして設定。このため誰でも自分の補助言語としてなじみやすく、手段をからめて記憶も長く保てる。

これらを受け皿に、多民族も目や耳の不自由な者もへだてなく、それぞれ母語を話しながらじかに伝えあい、互いの違いを感じながら、より深い理解に向かう。母語の伝統もこわさず育てつづける。









声の発し方は、親族や共同体から習うので、次第にパターン化し、利用する音韻が整理されてゆき、名前の類も、共同体固有の音韻で構成。

絵と、その内容を表す音声ことばとの関係から、が表音記号として、名前などの音声を表すのにも使われた。

しかしそれらの発音の仕方は、他地域や後世の人々にはわからない。後世に口承の伝統が記録されいても、 その発音が元と同じかどうか、確かにはわからない。

読み方が一定でない表音文字
ラテンアルファベットは元々表音記号だが、読み方には地域差ができた。多くの語源をもつ英語は、表音の仕方が一定でなく、方言によっても読みが異なる。 たとえば[sh]の発音を表記するのに18通りもあるなど、同音のスペルも多様で学びにくい。

外国語を学ぶには、それぞれの言語の発音記号、または専門的な国際表音文字を修得しなければならない。

機械技術化
レコーダー・電話・ラジオ・TVなどの発達・普及により、時空を越えて直接音声を届けられるので、これらを使う経済力があれば、ちがいの「聞き分け」を学べる。

異文化の名前が変化
英語式に発音を曲げて名前が呼ばれる。多くの英語民は、曲げているとは気づかずに。多民族間で読み書きがちがうので、固有名詞の多くがグローバルに伝わりにくい。

イニシャルをつかう名前の略記法
簡便だが、手がかりが少なくて、どんな種類のなんの略なのか、慣れなければわからない。
表音は科学的な発音記号で
ヒトに可能な音声なら、必要に応じて詳しく発音の仕方を表すシステムを持つ。アルファベットより多くの音素をカバーし、複雑な発音は組み合わせて表す。 意味伝達とは区別して、表音システムは表音のみに用いるので、時代や地域が隔たっても伝え方はくずれない。

外国語や方言の発音を学び、記録するにもこれが助け、さまざまな音声パフォーマンスも支え育てる。

機械+ 論理と視覚の助け
発音の仕方は、耳からだけではわかりにくいことがある。地球語の表音記法は、どの発音器官をどう使うかを視覚的に説明して助ける。

名前はオリジナル発音で
この発音記号の浸透により、どこの名前もオリジナルの発音で呼び合う。

種別も示す名前の略記法
異民族との交流が前提なので、固有名詞の種類を区別しながら、より親切に表示し、発音の手がかりを多くすることもできる略記法をもつ。






直観
毎日が、明日は死かもしれない日々。本能や直観が研ぎ澄まされた。直観的に世界像を描き、そこから日常を照らし観た。そのイメージは、宗教的な伝統につながってゆく。

自然観察の積み重ね
すべてを恵み、つつむ自然を、畏れと感謝をもって観察し、これを軸に計画やモノつくりがなされた。天体の動きと大地の関係、季節と水や動植物の関係などを記憶し、伝えた。

結ぶ思考
木と石、土と火など、異なる材料を「結んで」新しい道具を産み、意味を表す音声を「結んで」新しい意味を表現した。草木と大地、人と人も結ばれて育ち、家族や森や社会が成り立ち、命がつながるという意識を強くもった。

置き換え思考
日数や人数やものを縄の結び目や石ころなどに置き換えて数えた。記録、計算、計画の出発。

時の基点は常に現在
文字による記録文化が背景にない時代には、時を横軸の一定の流れでは捉えなかっただろう。原始の口承の世界では、時は現在 が基点で、遠くの時代については、今に活きつながる流れだけが語りつがれた。


英語に潜む下記の特徴が、共通化を介して世界中に染みわたる。相反する文化の民は、はざまで苦悩するが、英語だけの民にはそれをイメージできない。
               
一列の論理思考
アルファベットと音声言語の特徴や、語順に頼り、文中の役割を明確にする文法により、論理を一列にして相手に届ける説得力が育つ。
               
二者対立の競争
天秤式に対立させて計る伝統が、常に競争相手を探して優位に立とうと努力させる。1件ずつ対処し、相手側とのあいまいな妥協をしないため、全体は不安定さを拡大してゆく。

効率の優先
競争社会は、後々を考えずに目先に焦点を合わせて、判断のスピードを上げ、 効率を優先させる。そのため、お金や法で社会を計る。原始的な文化や質的な奥行きを切り捨て、スローなマイノリティーを置き去りにしやすい。

個人主義
全体が見えにくいので、自分中心の個人主義が発達。

いのちと向き合う機会が少ない
競争社会の先端と底辺以外では、日常「いのち」と向きあう機会が少ない。生きる喜びを仕事の中に見出しにくい。陽のあたらない民は、反社会的な思考に走りやすい。

自然も征服の対象
自然もヒトと対立する側に置き、征服する対象とみなす。自然からもぎ取り、傷むと対処療法を考える。

キリスト教的な背景
この伝統的な考え方や行事をひろめる。
時の基点もイエス・キリストの生誕に合わせるが、これらは、異教徒にとって受け入れにくい場合もある。また、紀元が1年からスタートするので、紀元前後が数学的に合わない。

せつな的・末世的
効率を追う結果、人々は、行程の苦労抜きに、らくして成果を求めるせつな的な生き方や、末世的な世界観に傾く。
地球語のしくみが以下のような発想法を共通にひらく。

視覚思考
表意記号や手話交流の習慣は、一時に多要素を捉え、全体を見渡す視覚的な思考を刺激する。一列思考に走りがちな欧米語民には、自己調和・ヒーリングのためにも作用する。

客観性
ヒトすべてが、伝統的な考え方と、自然を尺度にする表現を合わせもつので、他の角度から自己を見直す訓練が差別なく進む。

総合的な調和
原始性と合理性を組みあわせたしくみを使い、また、感覚・運動器官を多様に使って伝える習慣は、脳の働きを偏らせず、人格に総合的な調和を養おうとする。そんな個人は、社会全体の調和もイメージしながら考えようとする。

違いの認識から理解
各自の母語であやつるる共通語からは、相手との文化の違いが互いにのぞき見えるので、基盤の違いに注目しながら理解をすすめる。

結ぶ思考
基礎要素を組み合わせて表現するしくみは、物事の知識を鵜呑みにせず、つながりによって自分で理解する姿勢を育てる。また、新しい組み合わせは創造性を刺激する。記号を 秘儀的に用いて、個性や世界観探りに向かう者もあるだろう。
      
自然やいのちへの関心
基礎記号として「自然」や「いのち」のシンボルを日常的に目にする機会が多くなり、それらに対する関心が常に刺激される。自然観察から、ヒトもまた自然の一部と感じる。

グローバル社会の新暦
歴史上の時を計る基点を、グローバル社会の出発点に合わせる。またその紀元は、数学軸に合うよう、0年からスタートする。

対等感
地球語をともに育てて使いはじめることによって、マジョリティー・マイノリティーの意識から解放される。

希望
遠い未来につながる計画への加担意識が、終末観でなく、それぞれの人生に希望の光を呼ぶ。



年配者を中心に共同体で
体力の旺盛な両親は衣食住を支えるために多忙なため、幼児の教育にあたったのは主に体験を積んだ祖父母か年配者で、共同体のみながこれに参加しただろう。短命の時代、長寿で体験豊かな知恵者は尊敬を集めたし、彼らの教育役には、小社会の心をまとめる効果もあった。

目標
共同体の中で役立つ存在になるためという目標が明らかなので、一歩ずつ目標に近づく訓練には、苦痛よりも喜びのほうが大きかっただろう。

学習内容
●危険を見つけ、避け、立ち向かうためのさまざまな体験

●忍耐・工夫・躾
水や食料の不足、寒暑やきびしい労働に備えて、我慢や工夫する訓練や、排泄など日常の躾

●水の見つけ方、火の起こし方、天気の予想など、いのちをつなぐのに必要な常識
     
●狩猟採集し、衣食住に役立てるため、自然を見分け、聞き分ける体験

●道具を作り、採集し、手を加える技
      
これらは、子どもが大人を手伝うなど、実生活と結びつきながら学習した。友だちとの遊びの中で、狩猟や炊事などをまねる学びもあった。教育は知識の授与ではなく、全身と心を鍛えて 身につけさせた。

文化の伝承
祖先がどこからきたかの物語や、共同の作業や共同体の調和のために、ともに発声し、歌い踊り、儀式する文化の伝授

教育機関で
両親が職業を持つことが多くなり、基礎教育は、保育所や学校に多く任される。文明化により高等教育の期間が次第に長くなり、専門化も進む。情報量は増加の一方なので、社会に出てからも自己教育が生涯つづく。

学校教育の目標は、社会人として生きていくための常識と身体を備えることだが、その社会は地域によって異なる。まず、地域社会に沿った言語でその社会に必要な基礎教育を受け、その後、技術手段や教養をひろげるため共通語の英語教育がはじまることが多い。英語民は他の外国語を選択で学ぶ。

特徴
●意欲と経済的な運に恵まれれば才能を十分にのばす自由がある。

●文明が進むほど必要な知識量が加速度的に増し、均整の取れた健康な心身を育てることがむつかしい。

●子どものころから競争社会。家でも集団教育のなかでもストレスが多く、家庭的な血の通った交流が得にくい。

●専門化するほど、よその分野が見えにくく、世界の全体像がみえなくなる。

●こどもと祖父母世代との接触の機会がすくなく、世代を超えて活きた知恵が継承されにくい。

●第2言語の英語学習に多大な時間を投じても、使うチャンスがなければ忘れて役立たない。

●言語によって情報量や情報内容に偏りができ、少数言語民は自信を無くし、母語を育てる教育がおろそかになる。

●英語的な考え方のマスコミの教育によって、世界が想わぬ方向に突っ走らされるおそれがある。多民族を抱えながら、911以後のアメリカが突っ走ったように。

●英語の変化が激しいため、研究資料も頻繁に更新を余儀なくされ、積み重ねにくい。そのことは、自己中心に利便を追う研究態度を支え、さらに英語を変化させる。

●健常者はふつう、手話や点字を教育されない。そこで障害者は、人々から奉仕を受ける社会のお荷物意識から出にくく、他の能力が優れていても発揮しにくい。また、健常者が事故などで突然障害を受けたばあい、必要な伝達手段を近親者とともに新しく学ばねばならない。
家庭+学校+メディア
地球語は外国語のように教えない。絵本やゲームの中の基礎的な象形文字で、幼児が母語を理解し憶えるのを助ける。学校の児童は、地球語の象形文字や単純な要素を組む表現に助けられながら、母語の語彙や様々な教科を学習する。後にどの外国語を学ぶにも地球語が助ける。初期には親や先生もこどもを手伝いながらともに学習することになる。

子どもたちは、民族を問わず母語文化と、自然を基とする尺度の2つのイメージ計器を併せ使いながら成長する。
         
共に育てる体験
知識の供給だけでなく、地球語をともに育てて新しいグローバル世界をひらくという具体的な教育姿勢を世界中で共有する。これは、こどもや学生に希望を与え、意欲をもたせる。ヒトみなが伝達の同じスタートラインに立つことで、障害者や後進圏の人々はことに力づけられる。
         
地球環境や常識の教育
地球環境や生物やヒトの心のしくみなどの常識やグローバルな問題点を、視覚的でわかりやすい地球語シンボルを使った共通の副読本に助けられて学習。ときには、インターネットで世界中でそれらについて意見も述べ合う。こうして、多角度から考える姿勢や、全体の調和への関心を深めさせる。
         
●ダンスや発声法その他さまざまな実技教育にも多手段で利用して、全心身の総合で考えるよう育てる。

●こんな教育では、多民族の学級もまた、より面白く学べる環境になる可能性がある。聞こえない生徒も仲間入りできるかもしれない。地球語の補助教育は、心に窓をひらかせる。

●分類・整理しやすく、また表現の基礎が変化しない地球語により、研究資料は世代を越えてひろく継続的に積み重ねられる。そのため息の長い、本質的な研究態度が養われる。

●初期には、多様なクラスやメディアによって、地球語の指導がひろく開かれねばならない。が、一度知ると忘れにくく、多様に役立つ地球語システムなので、外国人と交流のあるなしにかかわらず、個人的に使いつづけられる。メモや思考の整理、新発想への刺激など、自己教育に役立てる。

●初期には、使い方をめぐって世界中が議論沸騰するはず。これが、今後のグローバルな教育にとって大事な点を洗い出し、人類史上最大の峠を越える重要な過程となるだろう。一家庭内でも、世代を超えて一緒に学び、考え、地球語をめぐって対話することで、家族の絆を強めるかもしれない。

●地球語が軌道に乗った社会では、漢字などの複雑な表意文字が日常的に使われなくなる恐れがある。また地球語化しないデータは世界から参照される機会が少なくなる。地球語普及と同時に、各文化内で対策しはじめたほうがいい。






親族を軸とする原始共同体

いのちの支えあいが経済と社会の基。能力に応じた役割分担をしながら仲間全体が助け合って生活を支えた。社会のためになんの役にも立たなくなった者を置く余裕はない。その厳しさが底辺にある。

●衣食住すべてが自然に密着する。季節に応じて狩猟採集の場を移動した。移動ルートがきまってくると、有用な植物を選別して護ろうとして栽培の第一歩を踏み出す。器で煮炊きが必要で保存可能な 穀類が栽培されるまでは、共同体は大きくならず、定着もしなかった。

●共同体同士の協力、争い、物々交換があり、探検者が運ぶ珍しい物や情報が大きな刺激だっただろう。わずかな人口の交流では、個人の利益よりも、 心の通い合い が大切だった。

●環境を観察し、感知したものを総合して直観力で世界像をイメージする能力に優れた者が中心になって、共同体を調和させた。そのためにシンボルを使ったり儀式を行い、 宗教がはじまる。

●情報の流れは遅く、技術・道具は、非常にゆっくりと発展した。しかし、ゆっくりでなければ味わえない、いのちの濃さ・ゆたかさがあっただろう。祖先が後世から神々として祭られる所以だ。
文明の発達と自由競争経済

●お金を基準尺とする競争の結果、「経済」とはお金を回転させること、そして金額がふえることは成長とみなし、お金を多く使えるのが豊かさだと思いこみがち。

●文明圏では、職業の分化が進み、衣食住の素材は世界中を移動。人々は自給しなくても食物を得られるが、食べものから季節感が失われ、生産の工程も消費者から見えない。そんな構造と価格競争から、農業・林業やその加工過程で手が抜かれ、大地の疲弊や海の汚染を進め、公害を蓄積している。また水や食料産地が偏在して危機に弱くなっている。。

●個人の利益追求の自由の結果、賃金や価格の地域差を利用して富む者はますます富み、汚染被害や搾取を受ける側との暮らしの差が拡大している。

●法の複雑多化が進み専門化する一方、個人の道徳心がゆるみ、宗教的な心の支えも減少。法は、伝統が関係して国家間で異なるが、英語文化の影響が進む。

●文明圏では多大な情報量と速さのため全体が見えない他方で、情報が伝わらず無視される地域もあり、知識に極端な不均衡がある。

●民主主義を説くが、グローバル社会の伝達を英語で支える限り、不公平と文化の違いによる摩擦はつづく。家なく飢え、水に不自由し、文字を読めない人口が少なくない。原始ヒトはこの状態がふつうで、不幸とは思わなかったが、英語的価値観から見るとみじめになる。原始生活を営む環境も、もはやない。不公平感は、紛争やテロを起こしつづける。

●紛争やテロの防止・鎮圧に備えるハイテク軍備が巨大産業として世界経済を動かす。地球の平和を支える大儀を掲げながら、軍事力の行使は国益優先に決められる。 自分で戦場を体験しない選挙民が、平和よりも身近な利益を望んで戦争に至らせる。戦争は、 莫大な財政と資源 を使い、正気から狂わせて人命を奪い、地球環境や人類の歴史的な遺産も傷つける。それがなくならない。

●このように、国家の集まりが英語を介して地球社会として調和するのはむつかしい。反戦・反核・反公害や自然保護の運動は盛んだが、天秤式に反対するだけでは、積極的な平和建設への想像と創造がでてこないのではないか。

●時間がお金の世界の中でゆとりを無くし、心の病がふえている。また、肉体を総合的に使わない職業がふえて、仕事とは別に自分の体を動かし、管理する必要があり、 スポーツやトレーニング施設、 対処療法的な医療、心理カウンセリングなどが発達。

●また、映画・小説・エンターテインメントやバーチャルなゲーム、スポーツの観戦などが個人の実体験に代わって、いのちの躍動感を満足させる。

●文明・貧富の差を保つなか、余裕ある者の慈善によって後進側や障害者を救うシステムが発達。救う側と救われる側の立場の差も社会が支える。
多様な伝統社会と地球民社会の重層

経済の健康化
お金という価値基準のほかに、自然に基づく尺度を合わせもつため、回転金額をふやすだけを経済成長とはみなさない。動く内容の質が、多角度から検討され、動く金額を伸ばすことよりも、グローバル社会全体の健康な調和を経済成長とみなす。

多様な伝統の共存
伝統の宗教・政治・アートなどが、互いに影響されながら、押しつぶされることなく、担い手の意思によって育てつづけられる。各方言は地域愛を深めながら語りつがれ、土地柄を磨き保つ。無文字社会さえ、文字による記録を拒んで口承の伝統生活を護りたければ、手話で他とつながりながらそれができる。
           
●共通・共用
将来は情報がグローバルに対等にひらかれる。説明書・マップ・字幕・広告の類も地球語版ひとつで全地域をカバーする。資料類の末永い共用も世界を結ぶ。初期には母語の併記が要るが、開始当時からアイコンとして広告やウェブサイトの簡潔化に役立てながら普及。

伝達の公平化
立場の差が減り、世界が金権や武力によって操られにくくなる。

軍備削減と雇用対策
違いの共存を認める結果、国家間の摩擦が減り、軍備の必要性が激減する。地球語は、普及教育、関係ハード・ソフトの開発、シンボルを利用するデザインやパフォーマンスなど、新しい職業や創造的な仕事を大規模に産むので、それぞれの能力を活かしながら失業者を吸収する。この変革で資源やエネルギーを大はばに節約し、環境破壊や社会不安も減らす。敵を脅して鎮めるのでなく、自らが平和になりながら平和社会の建設を進める。

●自然に沿う言語のしくみを使ううちに、一人一人が自然環境への認識を深め、文明時代に即したモラルが自然に育つ。

ボランティアの輪
地球語の辞書やデータの開発や普及活動には、世界中からのボランティアに大きく依存する。参加者は、新しい世界を開く夢を共有し、さまざまな分野で民族間を超える理解を探る。そして多くのサークルが次第に地球語でつながる。このボランティアのひろがりは、やがて世界がひとつに結ばれる土台となる。

伝達能力の保険
機械文明の世界では、誰がいつどこで事故に遭うかわからない。突然不自由な身になっても、手段に融通が利く地球語の基礎知識があれば意思疎通にこまらない。多手段をふだんから使うと、いろんな立場を思い遣るようにもなる。地球語の普及した世界は、伝達能力の保険が利く世界でもある。

障害者の活用
目や耳の障害者が用いる地球語の記号は、健常者にもわかるので、彼らもまた同じ交流の輪に入れる。彼らのほうが鋭い感覚をもつ方面もあるだろう。 奉仕を受け、社会の荷物と感じてきたストレスから解放され、眠っていた彼らの能力が、これまで閉ざされていた社会を飛び越えていきなりグローバル社会に役立つ。

●このように希望があり、地球全体が  平和に向かうとき、個人のストレスも少なくなり、社会はあくせくするより交流を楽しむ傾向になるなかで、地球語は自然に育つのではないだろうか。

母語からの批判の目
地球が一つに結ばれていくとき、流れの行く手が間違いでないか、 個々が母語の文化に問いながら見張りつづけることがどこまでも 大切だろう。

Yoshiko McFarland 記 (Aug. 2003、更新:Oct. 28, 2003 )

リンク歓迎します。
*主な参考文献 "The story of English" (Robert McCrum, William Cran, and Robert McNail, Elisabeth Sifton Books - Viking, 1986)

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